TROIS

観劇後に気合があったときだけ書きます

『誠の群像』にみる「誠」とミソジニー

ある実在した時代や人物を登場させるフィクションをいま新たに生み出す際、その時代の価値観が現在のそれと著しく乖離していることがある。しかし乖離している、という事実だけでそのフィクションを根本から否定すること、描かれている内容を見たままに受け…

ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』

ポーの一族を観てきました。 原作ファン観点から、この演出家はなぜこの作品を自分の手で舞台化できると思ったの…?と目の前が真っ暗になるような光景が次々と目の前で展開されて憤死しそうになったけれど、私は幸いなことにヅカヲタでもあったので、フィナ…

レヴュー・スペクタキュラー『SUPER VOYAGER! -希望の海へ-』おかわり

宝塚はまりたての友人の感想を読んで、恐らくわたしにとってのMr.Swing!のらんじゅさんくらい、SuperVoyagerの望海さんが盤石な存在に見えているという事実に、時の流れを感じずにはいられないこの頃です。前回の感想でとばしていた場面をいくつか記録、と思…

宝塚短歌まとめ

幕末太陽傳のころに詠んだもの 世の中の類いまれなるたっとさを結ぶ手だてのデュエットダンスロマンチック・ラブ物語る世界なら君のものにはならないだろう 完ぺきに男の気持ちがわからないあの子の父性はカフスで留める物語すぎないでいたいくらかは緑袴に…

ミュージカル『FUN HOME ファン・ホーム』を観てぐるぐる考えた話 (2018.2.16追記)

舞台自体の感想というか、観てぐるぐると考えた話です。 レズビアンの漫画家である娘とゲイの父親の話。外面は取り繕いながらも内側に複雑な事情を抱えた家族の話。夫に浮気され続けていた妻の話。自分の価値観を押しつけようとする父と、そんな父に影響され…

雪組公演 『ひかりふる路(みち) 〜革命家、マクシミリアン・ロベスピエール〜』おかわり

最終的に、いますべてのものに感謝のポーズ、という気持ちになった作品の感想。 ムラ初日に観劇した時はうーんこの作品どうかなはまらないかもなと思っていたのに、ムラ楽を観たときは(3回目にして)このあと東京公演があるなんて信じられないくらいしみじ…

レヴュー・スペクタキュラー『SUPER VOYAGER!』

ショーの感想は、歌や踊りを表現する語彙がお芝居へのそれ以上にないので、「かわいい」「かっこいい」「おもしろい」「たのしい」以外の言葉が出てこなくて絶望することが多い。しかし記憶を縫い止めたい。そういう言い訳からはじまる記録です。 「SUPER VO…

ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』の感想、あるいはジャーヴィーぼっちゃま観察記録

どこにいても持ち続けよう、ダディ・ロング・レッグズを心に。 初見は変更点にあれほどまでにぶつくさ言っていたくせに、観劇毎に心を傾けていって、結局「有罪!」と両手を挙げての降参です。 まずいうまでもなく物語が好きです。照明が舞台に落とす陰影の…

風姿花伝プロデュースVol.4「THE BEAUTY QUEEN OF LEENANE」

母と娘の話と聞くと、怖いもの見たさでのこのこ足を運んでは大怪我を負って帰ってくることが多いです。ある意味肝試しで、でも出てくるおばけは見知った人や、自分の顔をしている。今回も例に漏れず、満身創痍で目白までとぼとぼ歩きました。胸に残ったのは…

宝塚雪組『ひかりふる路〜革命家、マクシミリアン・ロベスピエール〜』(2018.1.12追記)

史実はともかくポスターを見て持ったイメージはリアルに胸板が厚そうな世界のスーパーダーリン。のぞみさんちょっと1/2くらいタオルじゃない大丈夫?!と肩を揺さぶっても一見、びくともしなさそうな包容力。そんな力強さから勝手に組織を能動的にぐいぐいと…

ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』

2014年の感想 http://d.hatena.ne.jp/trois_reve/touch/201403 2017年版を観て、現段階で感じたこと。ジルーシャの好きなところ。わからない、知りたいという好奇心、想像力を握りしめ、世の中に「?」をぶすぶすと突き刺し切り取るさま。日常の困難に立ち向…

宝塚雪組 ミュージカル・ロマン『琥珀色の雨にぬれて』

宝塚雪組 ミュージカルロマン『琥珀色の雨にぬれて』なにをおいても駆けつけなければならない望海さんと真彩ちゃんのお披露目公演! 千回おめでとうございますといっても足りないくらいよ@ジュリエット、という思いを胸に劇場に向かいました。柴田先生作の…

『星逢一夜』再演

劇場で一回、ライブビューイングで1回観劇。 宝塚作品に抱いていた認識を揺さぶられた初演も、登場人物らのやさしさが身にしみるからこそよけいに苦しい再演も、それぞれに心に残る作品。 宝塚で初演再演と観るのは初めて。しかもあの星逢一夜。同じ演目を同…

ミュージカル『ALTAR BOYZ』2017

ABZ

アルターボーイズという作品についてはもう、かなり言葉を出し尽くしているのだけど(過去記事参照)、書くことで記憶の活性化をはかって、それを反芻して刻みつけたい。感じたこと、個人の思い入れと、起こったこと描写の比率バランスの悪さがヤバイ。あるア…

陥没

同演出家作品を観劇するのはキネマと恋人に続き2作目。前回がとても幸せな観劇体験だったので、今回も、とわくわくしながら臨んだのですが、観劇後の感想としては今まで見た舞台作品内で堂々のワースト1ランクイン!でした。お芝居をおもしろく感じるポイン…

ミュージカル『ドン・ジュアン』3

▼プレイボーイぶり アンダルシアの美女の扱いを見ても、ジュアンはじゃじゃ馬ならしがお好きで、飼い慣らすのに少し骨がいるような気の強い美女相手じゃないと燃えない、だから手の内に入ってしおらしくなったら捨てるんだな、という流れが分かりやすすぎる…

ミュージカル『ドン・ジュアン』2

最初の走り書きと同じことを言い換えたり、ぐだぐだと。ドン・ジュアンはヒーローじゃないから、相手の気持ちを慮ることが必須じゃない。彼は基本的に自分以外守るものがない。そこがある意味清々しい。真実の愛を得て、正しい人として目覚めて、信念のため…

ミュージカル『ドン・ジュアン』その1

初日観劇後の走り書き(主に主人公について)インタビューや生田先生との対談で想像を巡らせてワクワクドキドキしていたけれど、人としてわりとどうしようもないダメさ、クズ男であると同時に、女たちが彼を求めてやまないわけがひしひしと伝わるような造形の…

宝塚 雪組公演 浪漫活劇『るろうに剣心』

タカラジェンヌの二次元への寄せ方、キャラの再現度については楽しみしかなく、しかし小池先生のオリジナル脚本ってどうなのかなと思っていたところ、うっすらとしたダメな方の予感があたってしまった印象です(ムラ2回観劇現在感想)。1幕でのキャラが出そ…

『星逢一夜』一揆について

星逢という物語の中に全部必要情報は詰まっていると思うので、義務教育レベルの歴史知識があれば他には何もいらないとは思うのですが、個人的にその最低限知識すら怪しいふしがあり、念のため調べてみました。 史実と異なる部分と注記があっても、まずその大…

『星逢一夜』再考

後だしじゃんけんにもほどがあるのですが、初日観劇した際に、お泉をもらってくれ、と源太が土下座をするのを見た瞬間、え?そんなことをしてしまうの??と彼のその行動を正直飲み込みがたく思いました。土下座には、なにか抗いがたい力によって強制的にさ…

7/17 18 宝塚『星逢一夜』2

○紀之介について みそっかすで育てられて、放り出されていたくせに兄がいなくなったとたんに代用品として都にのぼるよう命じられる。あなたの選択にお家の存続がかかっていることを忘れぬように、というきっぱりとした彼への母の言葉は、そうならない道をた…

7/17 18 宝塚『星逢一夜』(正しくは1点しんにょう)

初日、二日目と観劇してきました。 悲しいものだけではなく、美しいものを見ても人は涙がこぼれるんだなと、改めて思いました。美しいといっても遠くに置いて距離を保ったまま美しいと思うのじゃなく、掌に拾い上げてしげしげと眺めたくなる、いつか見た、あ…

6/11『エリザベート』を観て

2011年の東宝版ロミジュリ初演以来、小池先生(の演出)に翻弄されている身です、とはじめたら身の上相談のようになってしまった。2012年で岡田さんのフランツに落ちた東宝版、マイ初見エリザでは、この作品をハプスブルク家の物語と思い、トートを基本的に…

宝塚雪組『アル・カポネ―スカーフェイスに秘められた真実―』について

ついて、ぐだぐだと。 見てろアメリカ!とメンチを切ったり、俺たちのアメリカンドリームが叶うんだ!と瞳を輝かせるアルが一番認めてほしかったのはアメリカという国で、一番恋してたのもアメリカなんじゃないの?とぼんやり考えて、アルカポネさまとんだひ…

5/26 宝塚雪組『アル・カポネ―スカーフェイスに秘められた真実―』

手にした葉巻をベンの顔に押し付けるのか、ぐらいの距離まで近づけてから、煙を吹きかけるだけにとどめるいじめや、壁に葉巻を押し付けて消すのも見たかったけど、「殺れ」とか「民法、刑法、刑事訴訟法」(空中を葉巻で指しながら)が見られたのでもうそれ…

DC 宝塚雪組『アル・カポネ―スカーフェイスに秘められた真実―』

演じる側の人はいつまでも役を引きずっていないで、目の前にある自分が今演じる役のことを一番に考えるのが正しいのだろうし、それでも過去の役をいつまでもひきずってしまうのがファン心理だよなあと思うのだけど、今やっている役のこの部分の表現は、感情…

5/9 11:00 宝塚雪組『アル・カポネ ―スカーフェイスに秘められた真実―』

エリオットとの愛憎劇を見るなら下手、メアリーとの恋愛模様を見るなら上手 「スカーフェイス」が封切られたのがアル・カポネが捕まった年、遡ればアル・カポネがマフィア現役時代に映画の製作は既に開始されていた、というところは、犯罪者本人が生きてるの…

5/8 宝塚雪組『アル・カポネ ―スカーフェイスに秘められた真実―』

自分のための備忘録なのに書き留めきれてないまま観続けてるんじゃ世話ねえぜ!と思いつつ、3、4月のあれこれをすっとばしてのアル・カポネです。 自分の好きな役者さんの真ん中の姿を見られる幸せ、また、お芝居がたっぷり見られる幸せを噛み締めています。…

2/13『マーキュリー・ファー』

サウンドオブミュージック、エーデルワイス、薔薇と核兵器に乾杯、ナパーム弾、子どもエルビス、花火、ベトナム戦争、パタフライの色、パーティの意味 「どこに在るんだ/もっとやさしくてあったかい星」どこかの時代の荒涼したどこかの街。バタフライと呼ば…