TROIS

観劇後に気合があったときだけ書きます

ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』の感想、あるいはジャーヴィーぼっちゃま観察記録

どこにいても持ち続けよう、ダディ・ロング・レッグズを心に。
 
 
初見は変更点にあれほどまでにぶつくさ言っていたくせに、観劇毎に心を傾けていって、結局「有罪!」と両手を挙げての降参です。
まずいうまでもなく物語が好きです。照明が舞台に落とす陰影の細かな表情もあの作品の奥行きを豊かにしていて、小道具ひとつひとつのさりげない雄弁さにも心を寄せてしまう作品です。ジルーシャのチャーミングさに、出会うものすべてに驚き震え反応するやわらかい心のあり方に、それを余さずすくい上げる言葉選び、表現力にも気持ちを沿わせずにはいられません。彼女に出会って動き、流れ出すジャーヴィーぼっちゃまの感情の豊かさにも心を引き絞られます。それから彼のおでこに品がありすぎることにも。凹凸なく見えるけど横顔の眉の出っ張りから目のくぼみ、鼻のラインが金貨に彫られる系なのご存知でしたか?知っていたら説明する必要はないし、知らなかったらわたし、説明できません。「イノウエヨシオノ カオガイイ」とどこかへ電報を打ちそうになったけれど、もちろんジャーヴィー坊ちゃまとして心を奪われていました。
ぶつ切れのメモをなんとかひとかたまりにしてここに置いておきたく、舞台上時系列準に並び替えてざっくりとまとめています。衣装とのバランスが好みすぎて顔ファンか??みたいな感想に終始してしまっているターンと芝居の内容についてとまぜこぜ。
 
ジルーシャと初対面(ジャーヴィスとして)~その後
三度目に上手から見た角度付きよしお・ジャーヴィスいのうえさんの見目がよすぎて、スーツも、サスペンダーも、丸襟にネクタイの似合いようも、帽子を脱いだ後一房とびでる左こめかみのシケも、撫で付けた前髪の畝も、ゆうざい、有罪だ!!!!とわめいていたのは私です。しかし帽子、特に前半のカンカン帽は頭の上部が隠れるとそういう具合になるのか顔がとっても四角く見えて、そういえばこの人は共鳴するエラ持ちだった(小顔ゆえに忘れがち)ということを思い出す。そういう意味で我にはかえるけど、だからいけてないとかそういうことではまったくなく、この形のスーツの似合いっぷり(ステッキも込みで)、丸襟のかわいさも遊び心と滑稽にならないぼっちゃま感をかもしている…ましてやジルーシャとの身長差よ……みたいにそれくらいのハンデがないと乗り切れなかった、こちらの心が。そういう一見欠けたるところなしの男が、自分が援助している一女学生の一挙一動に心も身体も振り回されていくさまの愛おしさよ!
手紙に書かれた男はわたしだ、のときからもうはっきりと豊かになりだす表情、むにむに動く唇のヒン曲げ方、うつむいて合わせた両手に沈み込んで拝むみたいな仕草と、眉根を寄せたときの目元近く、鼻筋の両脇にできる眼鏡跡みたいなふたつのくぼみ。どこかのフレーズで苦悩した目つきで客席に顔を向けるジャーヴィスの視線一直線上に位置する前方下手に座ったとき、日頃から横顔がベストですねハハンみたいな持論を振りかざしていたくせに心が焼け野原になってしまった。目が合ったとかそういうときめきではなく、彼がいっぱいに想いの水をたたえた湖の底をのぞき込んでしまったような気持ちになったもので。ジャーヴィス=ダディ、一人の人間であることは物理的な事実で、でもそれを知らされていないジルーシャからの「ダディ」宛の手紙に書かれた「ジャーヴィス」についての文章を「ジャーヴィスかつダディ」である自分が読むことはマナー違反ではないか?という、普通なら起こり得ない奇妙な状況のなか、ジャーヴィスの礼儀、まっとうな?感覚に照らし合わせたためらい。そしてそれを蹴散らしてしまうほどのジルーシャの手紙の魅力。大きな感情の揺れが起こる瞬間、行動を決めかねたりいままで進めていたことの正しさを疑ってはっと立ちすくむ人の表情がたまらない。そしてそういう衝撃を与えた人物が自分にとってどういう存在か、深く考え出すきっかけが訪れるとき。
「だって違っているから」「くだらないこというほかの子たちとは」の音程の高さ、頼むところがない少年のような声音もとても好きです。ジルーシャの手紙のことばとジャーヴィスの気持ちを重ね合わせているリプライズの歌詞。クラスメイトとそりが合わない学生のような口調で立派な成人男性の彼が思いを口にするおかしみと、同時に彼の心が彼女と同じかそれ以上若いとき、周囲の人間との合わなさゆえに素直に傷つき孤独を深めていたころの気持ちがよみがえってそのままあふれ出ているようで、”実年齢の殻”からはみ出た彼自身が客席に伝わる箇所だなと勝手にとらえています。

ロックウィロー
いま「ロックウィロー」と打っただけで、「ロックウィローと一言口にしたときのジャーヴィスの声の響きの深さ、浮かべた表情を一瞬で思い出してしまった。これが心の映写機か! 井上さんのしみしみの声に弱い族としては、あの思い出の場所の名前をしみじみと噛みしめるジャーヴィーぼっちゃまが最高に好きです。そしてあの時の彼の、口にした名前を持つその土地に、とても鮮やかな記憶を湛えている人の豊かさに満ち満ちた顔つき。初対面(彼女にとっては正真正銘)の自分とすごした時間を「昔からの親友みたい」(昔から友達だった)と表した、通じ合えるものをおぼえたジルーシャに、彼は思い出しただけでそんな顔つきをしてしまうくらい大切な自分の宝物を見せたいと思ったんじゃないのかな。
農場のこと、何も知らないけれどロックウィローって農場にふさわしい名前ね!なんて孤児院に戻らなくていい解放感も手伝って(彼女にとってそれが切実な問題であるのは十分に承知の上で)調子よく喜ぶジルーシャの愛おしさと、自分の過ごした豊かな時間ごと彼女に手渡したい、共有したいジャーヴィスの押し付けがましく見えるかもしれないけど、気持ちが抑えられないかわいさとが見え隠れ?だだ漏れる場面です。
直前の、ジルーシャに「ダディの秘書」からロックウィロー行きを打診した返事「なんて………いいやつっ!」への驚き、(むむっ)みたいな評価の受け取り方を審議する試案顔からの(……悪く、ないな?)というような片方の口の端だけ持ち上げるニヤリ顔も憎たらしくも好きだけれど、どちらもひとりの時の表情とはいえ、「ロックウィローのときの構えがぜんぜんない無防備さはことさらに彼の芯の部分がぽろりと出てしまった瞬間に見えて、後者の方がよりこちらの心をじんじんとさせます。それはもう天国!
ロックウィローソングがあのメロディとあわせてとても好きだったので、今回ばっさりカットされたことはものすごくショックだったけれど、友達が「ツガ、楓、」とふたりで木々の名前を交互に読み上げ合うのがいいよね、と言っていて確かにそれもすてきと思って観ていたら、これはこれで好きになってしまった単純さ。上手下手、光が入る大きな窓にそれぞれに腰掛けるふたり。ジャーヴィーぼっちゃまの自分もロックウィローにいるみたいに長い脚を組んでリラックスした様子も。
ジルーシャの様子もさることながら、初めてのロックウィロー報告はぼっちゃまも全体的に楽しげな読み上げ方でとても苦しい(こちらの心に響きすぎて)。「センプル夫妻」の懐かしさに満ちた声音、「イラハッチじいや」は、まだ元気でやってるのか!みたいな驚き交じりの喜びの声なのかな、という発見も。彼女がそこにいったら手紙に書かれることは想定していただろうに、記された思い出深い人々の名前を、とても大切な記憶と一緒に抱きしめるみたいに大事に読み上げるジャーヴィスの声がたまらなく好き。そうして「この本がほっつき歩いていたら 横っ面をひっぱたいて送り返されたし あて先は」で発覚する善行がジルーシャに知れた時の彼の慌てぶりに現れる詰めの甘さ!だけではない素の部分よ! 魅力的なおじさま、なんて言われたら当然の褒め言葉と受け取る姿勢、どうだ!という顔を隠せないくせに、このことに関してはストレートに褒められるのが耐え難い苦痛である、というこのバランス。ジルーシャの声に被せる「素晴らしいことだと思いません?」のいたたまれない風情といったら、なんてかわいい人なの、とこっちがしんどいのでいい加減にしてくれよ。
 
マイマンハッタン
いつからあなたのマンハッタンになったのよ??というジャーヴィスの浮かれ具合に苦笑いしつつも、前奏にかかるくらいの箇所、前回から引き続き「こんな素敵な話って聞いたことあります?」の台詞をジャーヴィスがトランクを押しながら口にするシチュエーションもあの声も、くるくると目まぐるしい七色の照明も好きだし、オスカーハマースタイン♪の高音からメトロポリタン♪と刻んでいくリズムも好き。結局新曲も好きになっていた。ちょろかった。「ふさがらない口」の手つきがにくたらしい。
「ニューヨークって、ちょっと、大きすぎやしません!?」のあまりことに若干キレ気味口調なジルーシャの興奮の勢いが伝わる言葉もおもしろかわいい。シェイクスピアに「感心」する「身の程知らず」なんて言葉ではおさまりきらない尊大さも、文筆業で身を立てたい彼女の見果てぬ野心、向上心の表れみたいで憎めないバランスに見えます。
 
幸せの秘密リプライズ
ジャーヴィスとジルーシャの初対面で初めて腕を組んだときや幸せの秘密リプライズのように、ジルーシャが別のほうを向いて気づいてないとき、彼女を見ているジャーヴィスの横顔がとても好きです。彼自身も無防備、彼女を見ていることにすら無自覚な表情で、でも何かが駄々漏れている。また、ロックウィロー話題で盛り上がるふたりが、ドーナツの!と声を揃えるところや、ロックウィローで農場の自然遊びにいそしむふたりに関する一連の手紙を読み上げる場面「私たちは道中笑い合い」(ジャーヴィスの声で)、トランクで山をつくる共同作業、そういう彼らの気脈の通じ合いがひしひし伝わってくる場面に一番グッときているのではと思うときもありました。この気持ちを俗っぽい言葉で表すなら「なんだよもう付き合ってんじゃんか!」といったところです。
もともと全楽曲歌い上げる系ではないのが魅力の作品だけど、この幸せの秘密リプライズで「相手の幸せを強く願うこと」のクレッシェンドの盛り上がりの後「それが何より尊い」で声をしぼっていくところが、とっておきはふたりだけに伝わる内緒話の音量で、みたいにも思えてしまうたまらなさ。まあ、何もかもこの気持ちがあれば、みたいにやや晴れやかな、ふっきれたようなジャーヴィスと違って、ジルーシャは多分彼に「秘密」があることを不安に思っていて、それが一抹の影を落としているような表情も見え隠れはするのですが。ぴったりとしているようでしていない、彼らの想い。微妙なすれ違いに見ているこちらはやきもきするし、それがまたこの作品に惹きつけられる要素の一つでもある。
 
卒業式~チャリティ~マイ・マンハッタン(リプライズ)
ジルーシャの「一度でいい、私を誇りに思って!」という叫び、「もしも家族があったなら」というていで手紙を送り続けた相手を、いつのまにか世界でたったひとりの肉親のように慕わしく思っていた彼女にとってどれほどの切実な願いか、この場面までこの作品を追い続けていれば自然にぐうっと迫ってくる。なんで名乗り出てあげないのよ!とジャーヴィスをとっちめたくなるとき、「ここにいる、いつもの姿で」に彼自身の臆病さが勝っている証といらだった日もありました。待ち人が訪れない彼女のひどく気落ちした姿に一緒にやるせなさを抱えつつ、でもそれぞれの姿や心理状況を第三者視点で見聞きできてしまう客席という立場の功罪、舞台の醍醐味ゆえに、彼ばかりを責められないことにも気づかされてしまうのですが。そもそも「ここにいる、ここにいる」の頼りない少年みたいな声(それこそロックウィローで養生していたころの)はいったいどういうことだ!?
そうして「チャリティ」に手を噛まれたことに気づくいのうえジャーヴィスのボロボロよ~~~具合にこちらの心ももうボロボロだ!有罪!と毎回やられてしまっていました。毎回、当たり前だけど微妙に違って、そして毎回違ったように心をとんと突かれてしまう。ぎゅうっと握った両手をほどかないまま「飼い主の手を噛む」あたりで胸にとんと持ってきている仕草がたまらない日も。日々その時の気持ちで変えていたのかな…
贈られた愛の意味を探して暗記するほど読んだ本を再度めくるジャーヴィスチャリティを歌いながらこれまでにジルーシャから贈られたたくさんの手紙にひそむ大きな愛に気づくまで。「助けたきみを今求めてる」の切実さと、これまでとはまた違う、初めての気持ちに立ちすくむ姿に、彼の人間味がさく裂する瞬間を目撃したこちらも身がもたない。回数を重ねて観てしまうと(私の集中力の問題ゆえに)どうしてもこちらの心がだらけてしまう瞬間、場面があるものだけれど、この作品についてはそういうことはほとんどなくて、むしろ今日初めて観たんだっけ?というように感激・感動する瞬間が毎回訪れて、それはすごく不思議で、幸せなことだなと思いました。
そしてそういう瞬間が訪れた幾度目かのときの心引き裂いたからマイ・マンハッタン(リプライズ)。ここも毎回、何でこの「成し遂げたジルーシャ」に対してジャーヴィスとして告白を!?とやるせなくなってしまっていたのに、君のすべてを私が買い与えた、と名乗り出ることが受け取る側のジルーシャにどういう影響を及ぼすか、散々逡巡したジャーヴィスが、彼女がすべてお金を返して公平な立場でダディに会いにくるといっているのだから、それまでダディの方は眠らせておくべきと判断したのか、と腑に落ちかけるくらい、完全に彼に肩入れしながら見てしまった回がありました。ここの観ている側としての心の在り方の正解?がいまだにわかっていないのだけど、でもあのときはうっかりジャーヴィスを全肯定しそうだった、危なかった…
 
ラストの流れ
ジルーシャからの、あなたがいない世界は空っぽでいたましいわ、を受け取って手紙を抱きしめてボロボロに泣くジャーヴィスの、ジルーシャとのやり取りを通じての心を動かすレッスンの成果みたいな心のやわらかさに、こちらまで打ちのめされる。月の光なんて大嫌いよ!ジャーヴィスが9か条計画で感謝の言葉を使うことを禁止したせいで、ジルーシャの表現力が、ダディへの愛の伝えかたのバリエーションが広がってしまった結果だと思っている。自分で自分を苦しめる結果となったジャーヴィスよ安らかに… そしてジャーヴィスに心を完全に寄せて観ていた何回目かのある日には、ジルーシャがようやく待ち望んでいた彼からの手紙を受け取ったところでも、初めて観た人みたいに心がじんじんしてしまった。ダディ(ジャーヴィス)の初めて(ということになっている)の手紙の文面も、大、大、大好きなのだけど、相手への呼びかけ方が大切なこの作品において、ジルーシャへの文中の「親愛なるご婦人」という呼びかけの言葉が、あの井上ジャーヴィスの声で音になるのがほんとうにたまらない。「会いにいらしてください」も「不慣れなのです。心の問題に関しては」も、もう真心のこもり方が最上級です。
そこからの流れはもう、これを読んでいる方はご存知ですよね? 知っていたら説明する必要はないし、知らなかったらわたし、説明できません。という定型文を置きつつ書きます。
ダディ=ジャーヴィスと理解した直後のジルーシャの、ジャーヴィスへの「ハァ?」(大文字)みたいな剣幕が前回よりましましになっていてとてもよい。「男性として魅力的ではないわね」に少し違和感があったのと、言葉少なでも、逆に沈黙が雄弁だなと思うので、ジルーシャの相槌が少し削られていたのは好みの改変だと思いました。ジルーシャの「続けて」のつっけんどんな声音のなかに潜む、ジャーヴィスがどういいわけするか聞きたい好奇心の見え隠れ具合にこちらもわくわくする。メインディッシュしかのっかっていないプレートの一番最後にとっておいた、とっておきの美味しいところ。ジャーヴィスのすがるような目つき、椅子に座っている人に立ったまま語りかけているのに、執務机に手をついて前傾になって、謎の上目遣い顔になるのやめてくださいかわいいかよ!?
勢いでキレ気味の、でも全身全霊の告白ですべてさらけ出した後、満身創痍で座り込む、呆けたジャーヴィスのうつむいた顔。眉と鼻筋がつながるみたいにすぅっと影が落ちていて、これはどう考えても漫画だなと思った。「失っていたのよ 大事なあなたを」で振り向いたあとの神妙な顔つきが、これ以上まちがえたら取り返しつかないと覚悟と怯えがある人の表情。だからこそ「君なしの人生 ありえはしない」がことばと気持ちがぴったりあっている響きで、いま人間としてようやく生まれ直した生まれてバンビ・ジャーヴィスみたいな、そんなふうに見てしまっていました。生まれて初めて書いているのよラブレター、とジャーヴィスもハモるから、彼も初めてのラブレターを書いたもう一人みたいに聞こえて、それはある意味真実であるとも思っている(いつものように勝手に)。
最後に、①片膝をついて手を差し出すジャーヴィス、②手を取って目線を合わせて膝立ちになるジルーシャ、③慌てて両膝付きに再度体勢を変えるジャーヴィスのおかしいくらいの真剣さ、という流れが本当に彼女らの関係性そのままでたまらないです。キスの後の膝立ちのままのハグ、初日付近はジャーヴィスの顔が下手でも殆ど見えない仕様でしょんぼりしていたら(前回からここがとても好きで、ここを見たいがためにジャーヴィス立ち位置は上手だけれど、友人と私のベストポジションは下手寄りだった)、クリエ千穐楽間際は上手からも見えるようになっていてこれはいったいどうしたこと!?とマイ楽に友人と動揺した記憶。ジルーシャの肩に埋まった横顔の、おでこから眉の骨の出っ張りから目のくぼみ、鼻のスーッまで見えて、でも口元は隠れているというバランスが最高で思い残すことがなくなった。いや嘘です、まだ何度でも見たい…
 
 
 
その他まとめられなかったはみ出し感想
・声音の力といえば「わたしがどれだけ無知のどん底にいるか、あなたには想像もおできにならないでしょうね!」のところも、言葉のユーモアのセンスと、彼女自身のプライドがひどく傷つけられているのがひしひし伝わる、わなわな震える声とのバランスがとても好きな箇所。
・ピンクの薔薇が届いてジルーシャがやな子を歌うときにジャーヴィスに照明が当たっていないのと、二度目の夏ロックウィローで過ごすことを強要されたジルーシャの歌でジャーヴィスがはけてしまって舞台にいないのと、前後で察せはするけど、その瞬間どう思っているか彼の感情が読みとれない余白が、物語の奥行きに思えてとても好きな演出。
・薔薇を手配する前の逡巡、視線を右に左にキョロキョロさまよわせてる顔やら、「親友みたい」に合わせて「昔から友達だった」と歌ってから(ともだち?!)みたいに動揺する顔、ジャーヴィーぼっちゃまの心の揺れを見つめる。
・ジルーシャの「同志愛を込めて」という結びの文句、彼らの関係にふさわしくてとても好きだし、そのあとの\テッテレー!/みたいなBGMも好きだ。
\ジルーシャとの関係がレベルアップした!/
ジャーヴィスと喧嘩をしてから4年生は卒業式までほとんど顔を合わせていないのに、ダディへの手紙に毎回彼の名前が出てくるのがジルーシャの彼への気持ちの深度を示しているようで、会っていないときこそ相手のことをより考えてしまうことってあるだろうなとしみじみする。
・まあやさんのジルーシャの、自分の思いつきや相手をやりこめたことへの満足げなふふん顔、ことばのキレが日に日にパワーアップしているようでとても好み。「さみしくて、なんだか怖いわ」の内訳は、ジャーヴィスがいない世界の時間も矢のように過ぎ去ってジルーシャ自身を前へ前へと押し出すことへの恐怖だろうか。
・ダディだけが私の理解者だというふうに手紙に書くジルーシャに勝手に苛立って、私だって君のこと全部知ってるんだ、なぜって…と書きかけたときのジャーヴィスが、あっこれはジャーヴィスとしては知りえないアドバンテージだしまったくフェアじゃない上に相当きもちわるいな…?と気づいて頭を抱える袋小路具合がいい。
・2幕冒頭お行儀悪くデスクに脚をのっけて手紙を読んでいたジャーヴィス「私たち女性が参政権を手に入れたら、あなた方男性は自分たちの権利を失わないよう気をつけなくては」あたりで椅子に座りなおすのがいいなと思うけれど、背筋を正すことでベストが似合いすぎるのが明らかになってしまってダメだ(わたしが)。あの幅広の光沢がある深いネイビー?黒?のネクタイもお似合いでさすがフォーマルスタイルに定評がありますね!?