TROIS

観劇後に気合があったときだけ書きます

宝塚雪組『アル・カポネ―スカーフェイスに秘められた真実―』について

ついて、ぐだぐだと。
見てろアメリカ!とメンチを切ったり、俺たちのアメリカンドリームが叶うんだ!と瞳を輝かせるアルが一番認めてほしかったのはアメリカという国で、一番恋してたのもアメリカなんじゃないの?とぼんやり考えて、アルカポネさまとんだひとり上手なあんちくしょうだな!と、公演期間が終わってからの方がいっそう、彼という人間への愛おしさが募っている気がします。
お芝居や漫画や小説の「訪ねたことのない場所への憧れを口にする場面」や現実以上にきらきらしく描かれている光景が好きで、実際にその場所を訪ねても、フィクションを通じておぼえた当時の感動は色あせないことが多いです。ガラス玉ダイヤより良く光るでしょう、ではないけれど、フィクションでしか描けないきらめきがある。そうした、24年組の漫画の中のパリロンドンを夢見ていた気持ちと、宝塚で描かれる外国(と書いてとつくにと読む)でおぼえたわくわく感憧憬の念は同質のものだな、と常々思ってきたのですが、アルが歌い上げるナポリティレニア海の青や、「that toddlin' town」シカゴ(フィナーレだけれど)をきくと、それらの都市がほんとうに「いいもの」のように思えてならなくて、アルは、望海さんは歌で空間に世界を描ける人だ、と思いました。歌だけでなく、ケンタッキールイジアナウィスコンシンという言葉の粒も、特に用もないのに口に出して目の前の壁にピンで留めたくなってしまうような。シルクのドレスもリボンもないけれど、やっぱりあの作品は宝塚の男役の演じるアルカポネなんだ、と思った瞬間。
作品や役について話すことが、役者について話すことになってしまうのはよくないと思いつつ、宝塚を見ているとありがちな視点……

彼女にやってほしい役が、ピーチャム(三文オペラの乞食商會の社長)、エンジニア(ミスサイゴンの売春宿の主)、ジャベール(言わずと知れた)とそれでいいのか列伝みたいなので心の中のメモ帳が埋まってきてしまっているのですが、それでも望海さんはパンジュ侯爵やホルストくんのような白い役も似合う、ニンの人だと知っています。



・マフィアのルール(アンダーワールドルール!が面白すぎる)の歌で主演様をコーラスグループに回してしまうあなたはいったい誰!?はっち様でしたか……と誰も逆らえない生まれながらのマフィアぶりにおののいてしまうトーリオさんのことを最初頭領さんだと思っていた(棟梁さんではないことは知っていた)

・エリオットが最後に現れて、ギャングスターの称号をアルにささげたとき、胸元にピカピカ光るお星さまを飾りつけに来た人みたいだった。

・フィナーレのせしこさまと望海さんが踊り示し合せながら出てくる振りの既視感について考えたらテナ夫妻の結婚式でした。