TROIS

観劇後に気合があったときだけ書きます

花組ショーオルケスタ『Mr.Swing!』

あなたの瞬きに身体も揺れるMr.Swing!!!!



らんじゅさんの発表について、昨日からもんもんと考えていたのが、オーシャンズで、ときいて、ああ、とすとんと落ちてきて、救われたような気持ちになってしまいました。ご本人がそういうふうにおっしゃる公演に間に合えたことが、ほんとうに、ただただ僥倖だったのだと。
たぶんこれから先、一度落ち付いたと思っても、ずっとそのことについて考えているわけでは無くても、ものすごくさみしい気持ちになることは絶対出てくるんだろうなと思うし、そのことへ、私よりかなしんでるひとがいるんだから、というセーブをかけるのは、あなたに悲しむ権利なんかないと、いつか誰かに自分が口走ることを許容するのと裏表だなと思います。
連帯感も持ちたい人だけがもてばよくて、その人が抱いた気持ちはその人だけのもので、思い入れ以上も以下も言葉にしようがないから、同じことに同じように皆が笑ったり泣いたりできることって、なんだかすごいことだなと思う。
形式は、誰かに対して取り繕ったり、はたまた柔い気持ちを守るためのもので、外向きの見解を表に出す必要なんてみじんもないから、とんとんと勝手な気持ちの整理として、ここにしたためておきます。
たぶんおそろしい数の人をどうしようもない、よるべない気持ちにさせてるらんじゅさんは、ずるくてにくくて素敵な人だなと思いました。
眼に焼きつけることしかできないなら、それをできるだけしっかりと。私は私の仕事を!
「永遠でもつかの間でも いまは同じ時を!」









ショーオルケスタ『Mr.Swing!』について
もともと台詞がない身体表現だけの舞台の楽しみ方にうとく、ショーとはなんぞや……と思って、いたころもありました。
豊かな表情とダンスひとつひとつにほんろうされるのがこんなにも楽しく、心おどらされるものだったなんて! この人たちはここで魂を燃やして、その灯りを私たちに見せてくれてるんだ、と、ものすごく尊いものを見ている気持ちになりました。生きていて楽しい、愉快だ美しい、そう感じてるよ竹内くん、と語りかけたくなるほど。彼女らのまばたきひとつに心も身体もすべて揺らされていたMr.Swing!
東京もほんとうに楽しみです!
すべてはまだ書きとめておけないですが、特に気になる場面を。


○幕開きのリス乱舞
リス乱舞=花組ショー冒頭で肩の埃を払うような振りが、肩にのっけたリスを、遊んでおいで、と肩からやさしく追い払う振りに見えると"ごく一部"でもっぱらの評判であることから。今回もショーではリスたちが元気に客席降りしていました。でもそのリスを肩から追い払った手でもって、客席に投げキスばら撒くからとってもこわい。
リス乱舞したあと銀橋にきたサスペンダー&スーツ花男が上半身をそらして隣の子に寄りかかるようにしたまま、襟元に人さし指を突っ込んで、アーーーーイ!と叫ぶところはほんとうになんなのだろう。なんなのかわからないからあと500万回見させて、という気持ちになります。
また、銀橋に恐らく躍り出る前にもあり、肩幅に脚を開いて、膝を緩めて、腿の付け根あたりにそれぞれ両手を置く、身を心持ちそらす、顎を心持ちあげる、くちびるを半開きにする、以上の状態をキープで腰を半分ゆるやかにまわしたところでコンマ1秒停止してからまた半分続けて回す、途中各々のタイミングでできたらウインクをする、という振りがとてもとても好きで、あすこの花男は最高に「こいよ…」とこちらを誘うお顔だなと思いました。

○蜃気楼の旅人
蘭ちゃんとれいくんのふたりでひとつ、両性具有のいきものの妖しさと、みりおさんのあやうい美しさがぴったりあわさって、すごく雰囲気のある場面だったなと。最後のふたりの揃ったにやり顔のもののけっぷりといったら!よっちさんに前からのしかかられ、後ろからるなくんに寄り添われているみりおさんの構図も好きです。

○野球
タカニュの稽古場映像の時点で、明らかなる他の場面とのテンションの差異に首を傾げており、実際銀橋に躍り出るらんじゅさんのお衣装、男と女の駆け引き、の「女」で小指をたてているお姿の年代逆行感に、お、おお…!?と思っていたのですが、花娘に簡単に誘惑される花男のちょろさ、必死さの他では類を見ない新たなかわいさに眼を奪われ、気がつけば今回のショーの中で一番好きと言っても過言でない場面になっていました。なんでこんなあほのこたち(語弊を恐れず)からこんなに視線を外せないのだろう……と冷静と情熱の狭間に居続けた結果「ばかなこほどかわいい」といういちばん達しちゃいけない結論に達してしまった。
必死に這いつくばって盗塁を試みる望海さんも、スウィングドアにぶつかっての登場なのにホームランかっとばす、なぜか婚約指輪をはめたまよちゃんも、フラワーズのお色気大作戦開始直後に帽子を外してやれやれ、だから女の子たちは困っちゃうな〜ふう〜みたいな顔する、男子!ちょっと!!なみつるさまも、みんなみんなかわいいです。がんがんいくわよ!な花娘ちゃんも見たいのに、基本表情が騒がしいのぞみさんから眼をはなせません。
腰低くして横移動しつつ片方の手のひらにもう片方の手の甲打ち付けておらおらするのとか、かっ飛ばせー!の若干やけっぱちなりふり構わない感じとか、そうかと思えば片方の手のひらで耳覆って、もう片方腕ごと振り上げて腰ふりふりするところとか、かわゆすぎる。

秘密の花園
ぶどう棚セットが配色含め、もぎもぎフルーツぐみに見えてしかたないです、という世迷いごとはさておいて。
望海さんのマスカレードの歌声は、耳から聞くというよりもう全身で受け止めるくらいでないとたちうちできない。根幹をぐらんぐらん揺すぶられて酩酊したような気分になります。らんじゅさんたちを囲ってくるんで、ひとつの別次元の空間を生み出している。歌の盛り上がりが最高潮に達した時に、上からヴェールがふわっと舞い降りてくる場面がとてもツボです。
役がわりはあきら子ちゃんとララちゃん(キキちゃんの女装ゆえ)を見ました。あきら子ちゃんの翼のなごりの肩甲骨の鋭角さと、肩幅があるわりに、肩から二の腕に落ちるところの肉が削げてるみたいだったり、全体的にまろみがあんまりない筋張った感じから醸し出される色気。
ララちゃんは、見間違えようのないほど立派なチューリップ柄ドレスの元気な男の子?おんなのこ??ですよ〜〜〜〜!と言いたくなりました。チューリップに茎と葉っぱまでついてるとは思わなんだ。ふくふく健康優良児なによりです、と思いつつ、きちんとつくところに肉がついた女の子、な体型であるにもかかわらず、男の子に見えてしまうのはなぜだろうと。

男役さんが女役をやるときに、いわゆる女性に見えない、しっくりこないことがあるのって、舞台上で男役としてあることに慣れすぎていたから、というよりも、女性性(を感じさせるもの)が自然に生まれるものじゃなくて、努力して生み出すものだからなのではなかろうか、と、ひとつの見解を示された気持ちになる。男が男を演じるのも、女が男を演じるのも、どちらもひとつのパフォーマンスであることに変わりはないのだなあと。



みーちゃんとみつるさまのCool Swing&Hot Swing場面や、黒燕尾については、東京公演を見てから!