TROIS

観劇後に気合があったときだけ書きます

望海風斗 MEGA LIVE TOUR 『NOW! ZOOM ME!!』⑥

望海風斗 MEGA LIVE TOUR 『NOW! ZOOM ME!!』⑥

 

 

 きいちゃんとのCもかけがえがないのですが、ABもそれぞれに素敵で、懐かしい楽曲の数々が舞台上を駆け巡るさまは、一足早いサヨナラショーを見ているようで胸に込み上げるものが多かったです。

 もはや見たものの感想なのか、見て思い出したものを懐かしむファンの郷愁なのかわからない、ごたまぜな文章を書きました。

 

 Aパターンの花組メドレー、冒頭のVictorian Jazzから懐かしいなあと思っていたけれど、これはファンになりたての時にスカステ録画をヘビーリピート(おはようのVictorian Jazz、おやすみのVictorian Jazz)していたからで、ブリドリイベントにも行っていない私はもしかして生で聴くの初めてだったのでは!?と今更気づいた。最後の高音が今の望海さんの音程に合わせて低めに変えられていることに、下級生のころ声が高くて、とご本人が語っていたエピソードを思い出す。改めて聴くと音に対して文字数が多い歌詞というか、一音一音飛び跳ねていて平らなところがあんまりない、語るように歌ってたっぷり聞かせるのが似合う曲に聞こえるけど、それってめちゃくちゃ難しそう。望海さんが軽やかに、楽しそうにやっていることって、だいたい結構大変なことなんだろうな

 

 当時の映像とともに流れる初舞台生ロケットの曲、白い衣装の組子が一列に勢ぞろいしてのロケットを背景に望海さんの「チャオ!」なんて、もうファン感涙の場面じゃないかと胸が熱くなった。毎日誰かの誕生日なのと同じように、毎年新たに配属される期の初舞台があって、でもそれぞれの初舞台生にとって、いや初舞台生でない人、なんならそれを目撃した/していないに関わらず、たくさんの人にとって特別なものである、いう事実がすごく不思議で、時々思い出してはじーんとする。その時々の機会としてのこの場面。未だに初舞台生ロケット衣装の望海さんを待ち受けにしている友人を知っています。

 

 初舞台どころか、あのCONGA!にも間に合っていない人間なのですが、ハマりたての頃にDVDを持参してくれた友人とパセラで鑑賞会をし、あまりの衝撃と中毒性に自分も即キャトルに走ってDVDを買った懐かしい思い出があります。ほかの曲と違ってあんまり見ないタイプの振り付けに見えるからいつもと違う感覚が刺激されるのかなと思いつつ、ダンスの知識がまったくない人間の言うことです。らんじゅさんのための公演だったからかな……太鼓を打ち鳴らすような振り、普通あんなかっこよくならない。許せムーチョ愛してくれ……左右に揺れる肩、重心の低さにもぐっときます。「向かい風をうけて」の声の高さを思いながら、草食獣の青いゼブラちゃんが威風堂々たるサバンナの王に。蘭寿さんへはくはくと尊敬と憧れの眼差しを注いでいた望海さんが、今度は下級生にそんな目で見つめられる番になったことに、今でもびっくりする時がある。

 

 望海さんのベネディクトは、JUMP!歌ってる人たちに負かされる役回りだったじゃん~~!と肩を叩きたくなるような愛おしい人でした。詐欺の片棒を担ぐのに躊躇する青年を寄ってたかって悪の道へ引きずり込もうとする悪い大人たちが、自分たちの仲間になることは親父を乗り越えて成長すること、と嘯く歌う曲が、なんでこんなに胸を打つんだろう。色々「なんで!?」ということが多い内容だなとは思うんですが、たくさんの人の転機になったであろうこの作品の曲を歌う、すでにめちゃくちゃJUMP!してる望海さんのJUMP!を歌う姿を見ながら不思議と清々しい気持ちになった。

 ある意味この公演で転機を迎えたただのファンの1人である私が望海さんに転げ落ちたポイントは、フィナーレの男役群舞、舞台奥から肩を揺らして前方へ迫りくる望海さんの重心の低さと眼力です。当日券B席最後尾でオペラグラスを覗いていた私の背中を椅子の背に張り付ける勢いだったその圧を懐かしく思い出した。

 

 生で見て初めてどハマりしたショーMr.Swing!のテーマを、翔くんとあみちゃんが歌う感慨深さを噛み締めた。ここから夢眩へと繋いで望海さんの花組時代のショーが時系列に続くのも滾るけれど、その後にまた下級生時代のショーに戻るのがなんだかにくい。いやこれはとっておきだし、絶対リクエストにも入っていただろうから、ここ一番の盛り上がりどころとして取っておいただけかもしれないけれど。

 

 EXCITER!!のテーマが嫌いなヅカヲタっているの? と大きい口をたたきたくなるけど、宝塚の生湯は花組のファンなのでどうかお許しを。望海さんの肩が揺れると心が揺れる(ノットMr.Swing!)。バチッバチッバッチッの後のウインクのキレがよすぎて、えっ今私ウインク見た!?と受け取るまでに時間差が発生しそうだなと動揺した。しかし破壊力は絶大なので、斬られたことに気づかずに歩き出して崩れ落ちる人になりそう。一列になった組子の前、舞台真ん中でトップさんが歌い踊るのって本当にいい、真ん中が誰であってもここぞというところでその配置になる、ショーの一場面にいつだってとてもグッときてしまうけど、その真ん中が自分が一番好きな人という光景は、これ以上ない幸せに溢れたものなんだなと改めて実感した。そのありがたみを噛みしめるためにいつだって引きで見たいのに、オペラグラスをすぐ構えてしまうファンですが

 

 「チュシンの星のもとに」を聞いてちょっとひとかけらの勇気と心情に似たところがあるなと思ったのは望海さんが同じコンサートで後者の曲も歌っているからで、同様のシチュエーションと感じる曲は他にもたくさんあると思う。でもなんだかそういう壮大な曲を歌ってほしいなと思ったんです(リクエストはしていない)。大きな宿命を背負った人をトップスターの役は当てられがち、というのはあるかもしれないけど、宝塚のトップスターには途方もない夢、愛や平和を恥ずかしげもなく歌ってほしい、という望みがあることに気づいたのは、ちぎちゃんの時のショー「Greatest HITS!」を見たときだったと思う。あれはもっとポップで身近な目線から始まる親しみやすい曲だけれど。望海さんが歌の厚みを保って世界観を広げられる豊かな歌を歌う人、というのももちろんありますが、日常的にそこまで途方のない望みを強く願うことはそうそうないし、なぜだかそう口にすることに照れてしまいがちだけど、宝塚でこそそういう歌を聴きたい。もちろんこれは芝居の中の設定があってのもので、ノブレス・オブリージュといえばそれまでかもしれないけれど、含まれている要素としては普遍的で、祈りのようで、遠くまで見渡すおおらかさがある曲。人々の平和や愛を願う、まっすぐな、ベタベタで照れくさい思いがこもった曲が宝塚で歌いつがれてほしい、という気持ちがあります。ちょっと清らかな話をしてしまった。そういう広々とした歌を新人公演学年で歌わなきゃいけないって試練だな、その時の望海さんはいったいどんな気持ちだったんだろうと、それを乗り越えた人が歌うこの曲の中に刻まれた歴史に想いを馳せました。

 映像で見た新人公演の記憶は「生まれて初めてぐっすり眠れた」と、ラストシーンのキスがめちゃくちゃぎこちなくておぼこい(呆然)の二本。

 

 

 Bパターン、A以上によくできたサヨナラショーというか「後に続くものを信じて走れ」感、望海さんがトップの雪組にはこんなに素晴らしい下級生も後に続いているんですよ、という組子への信頼の上に成り立っている構成だと感じました。

 魅惑のボーカリストくん(あっているかな)とはおりんのひかりふるのソロにおお!と思っていたら望海さんせり上がりで登場、からのワンス「愛は枯れない」をすわっちと歌うとは

 観客の多くが、すわっちが東京の大劇場で新人公演ができなかったことを知っている前提での場面構成に、宝塚ってこういうところだよねと、そこにあまりにも大きな愛や信頼を見出してしまって胸を打たれずにはいられなかった。望海さんが東京公演をほとんど上演できなかったことを思い出すたびにやっぱり悔しくて切なくて仕方がなくなってしまう、思い切れないファンのひとりゆえ、どこかでもう一度フルで望海さんのこの曲が聴きたいなと願ってしまう部分はあるのですが、それでもBパターンでこういう構成を見られたことはひたすらよかったなあと思う。私は、この場面のヌードルスという男の振る舞いを「愛」という言葉で肯定することは全くできないし、してはならないと思うのだけど、薔薇の花の視覚的効果を差し引いても、恋い焦がれた人へのひとりの男の征服欲やダメさや馬鹿らしさをこういう風にミュージカルとして成立させてしまえるのか、というその功罪、ギリギリのバランスを見るたびに考え込んでしまうような一場面だった。場面として「愛」ではないんだけど、Bパターンの構成は「愛」だった。

 

 パンフレットで影ソロとして名前が上がっていたのは見てはいたのですが、まさかSUPER VOYAGERのあの場面で子役を演じていたあみちゃんが望海さんが歌っていた曲を歌って、代わりに望海さんが踊るとか夢にも思わないでしょう!とびっくりな構成再び。これが「エモ」では?と叫ぶ心を押しとどめて、もっと似合う丁寧な言葉を探したいのだけど、この全編「エモ」みたいなコンサートの中で別の表現を探して頑張ってきたので、一回だけ使わせてほしい。こうやって「めぐっていく」のが宝塚なんだ、と思わせてくれるような場面。

 今回久々に見たあみちゃんがめちゃくちゃシュッとしてカッコよくギラッとしていてびっくりしたのですが、影ソロのあみちゃんの声は曲の音程もあってかいわゆる男役さんっぽさはなく透明感があって、そういう歌声が響く中であの白いお衣装(おをつけたくなる)の望海さんがのびやかに舞う光景の夢ゆめしさったらなかった。あみちゃんが見た夢の望海さんじゃないの?とぼんやりした頭で思ってしまう。蘭寿さんサヨナラショー影ソロで全然隠れきれていなかった望海さんのことを思い出しつつ。