TROIS

観劇後に気合があったときだけ書きます

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』 9/7マチネ、9/21ソワレ





観てきました。
このブログを始めるきっかけになった作品です。
2011年のヴェローナの彼らが本当に大好きだったので、再演のキャストが発表になった際は、このひとたちがこの作品に!という驚きと楽しみと、ああ私がとても好きだったマーキューシオの彼の続投はないんだ、というさみしさで途方に暮れてしまったのですが、エリザのルドルフで魅了されたゆうたくんのロミオが新たに加わったこと、大好きなりなちゃんのジュリエット、周さんの死がまた観られるという事実、そしてやっぱりキャストが違えど作品としてとても気になる演目だから、という気持ちに背を押され、新たな2013年のヴェローナに行ってきました。

話の中で流れる時間の短さ性急さだったり、東宝界隈(と括っていいのかわかりませんが)の作品としては珍しく、メインとして描かれる人物が若者たちで、かつキャスティングされるのも実際に若い俳優さんであったり、いろんな要素が組み合わさっているからだろうと思うのですが、いっぷう変わった、けれどまっすぐで、とても大きい熱量がぐるぐる渦巻いている作品だ、と改めて感じました。
初演から、それは私が以前、他の作品に見出していたパワーとどこかよく似た性質のものに思えてならなかったので、今回再演をむかえ、その作品のなかで生きていた彼らをこのロミジュリで、ヴェローナでみることが、なんだか、懐かしいような新鮮なような、不思議な気持ちです。
初演の梅芸大楽で城田くんが、こんなにたくさん泣いて笑って、たった数日間で人生の全てを知ってしまう様な作品はありません、というようなことを言っていたのが、どうしても忘れられなくて(それなのに一語一句仔細に覚えているわけではなく…)、今回観て、あのときの彼の言葉を改めて噛みしめました。すべてが詰まっている、とても情報量の多い作品。そして、どうしようもなく分別を知らないヤンキー集団のやんちゃがいきすぎて、刺しあってしまったというような単純な話でもなく、支配者のルールに屈しないと叫んだ彼らが、そこに組み込まれていたことに気づいてしまう話だな、と。

そしてそして、前回完全なるマーキューシオひいきで観ていた人間が、今回ロミオびいき視点から観ることになって、宝塚のロミジュリをベンヴォーリオ視点でみたときとはまた違った発見、驚き、楽しさが多々ありました。
以下に個別に気になる俳優さん、役について記します。
※いまのところ、ロミオとジュリエットのみ


〜ゆんりなのかわいさは世界を救う2013〜
のっけから阿呆のようなタイトルにしてしまいましたが、今回この二人が本当にとくべつかわいく思えてならないです。
モンタギューや他の人々との絡みはいったんおいて、ロミオとジュリエットについて。

○古川ロミオについて
ゆうたくんの恋愛ものに全然イメージが湧いておらず、初見のベンマキュ(というより東山マキュが多分に影響している)の組み合わせもあり、モンタギュっこと一緒でも、ひとりだけあれっこの子何でここに混じってるの?というような「混ぜてもらってる」感、浮遊感があるロミオ。「僕はそういう遊びはしない!」の説得力にも、このロミオの居場所って……と心配になっていたのですが、実際のところ、ジュリエットと出会ってからの彼は、彼女とと出会えて本当によかったね…!と素直に思えるような、恋する様子がひしひし伝わるかわいいロミオで、彼とりなちゃんのジュリエットが舞踏会の梯子上で出会った瞬間、天使の歌が本当に聴こえたような気がしました。愛し合う喜びを分かち合う君と、と歌うふたりが並ぶ姿が、そのままそこにずっととどめおきたいくらい、互いを想いあう気持ちに溢れた、かわいらしいふたりに見えたからだと思います。
今回舞踏会のあの梯子にまで電飾がついていて、色がくるくる目まぐるしく変わるのはいったい、と初見でびっくりしたのですが、ジュリエットとロミオがそれぞれ乗っている梯子がぴたっと組み合わさって、ふたりが出会った途端に真っ白にかわるライトの色、同時にそれまで床に背景に七色の粒を落としていた光も姿を消し、一面深い青に変化して、ふたりだけがまっ白く際だつ世界に一瞬にして変わる流れが、とてもくっきりと印象深く、好きです。
ゆうたくんは、こういっては無粋だけれど、自己陶酔する様も似合いそうな容姿の持ち主なのに、ルドルフの時もそうだったように、自分の内側に篭るしかないような孤独を抱えている役がとてもはまりながらも、それがナルシズムの方に絶対ゆかない、ぼろぼろになっても愛したい対象を深く愛せる、愛している強さを滲み出せるひとだと思います。21日ソワレでのロミオの憎しみリプライズ「ふたりの魂だけは引き裂けない」のつよい眼に、言葉にこめられているのが「そうであればいい」という希望ではなくて、「引き裂かれてやるものか」というはっきりとした意志であることにびっくりしました。彼の心からジュリエットのことを好きそうなところが、とても好きです。
初見も、バルコニーの場面にて、恋しいひとにじぶんの名前を呼ばれたのを耳にし、身体をくの字に折る勢いで喜ぶゆうたロミオのりなジュリへの迸る恋心をかわいいなと思っていたのですが、21日ソワレで見た「お父様と縁を切りその名を捨てて」をきいたときの表情から伝わる、このふたりの恋を成就させることがどんな意味を持っているかを悟った、バルコニーに上がる直前の表情に、生半可でないロミオの決意をひしひしと感じました。彼のあの表情で、この場面は、ロミオが、あっバルコニーにジュリエットがいる!!ともう辛抱たまらなくなって衝動に任せて駆け昇っていったような、そうそう単純な話じゃなかったのだと。そしてだからこそ神父さまに挙式してもらえるよう、お願いに行くロミオの決意がはんぱなものでないことがわかるのだなと。個人的に新たな発見でした。

そして、そんなに好きだったのに、という気持ちをとどめたままで見る、霊廟での、瞳の輝き唇の甘さ、で、亡くなったと思っている、仮死状態のりなジュリエットの髪を撫でる、希望の光を喪ったゆうたくんのロミオの絶望について改めて考えたら、お腹の底が寒くなりました。りなジュリエットとゆうたくんのロミオのふたりがほんとうにかわいかったのと同じくらい、初見時、周さんの死をまとわりつかせて、僕は怖い、憎しみリプライズで膝をついていたゆうたくんのロミオも、好きで好きでたまらなかったです。
初夜のシーンで、ゆうたくんロミオの首をしめるように、舞い降りてきた周さんの死がゆるく手をまわす場面、僕は怖いももちろん、憎しみリプライズで、うちひしがれるロミオの傍でピルエットする周さんの死の構図を見て、こういう表現は場面が場面だけに難しいですが、とてもしっくりとなじむ光景に、あっわたしはこれが見たかったんだ…と心底ふるえました。

○りなジュリエットについて(7、21)
りなちゃんのジュリエットが大人びたなあとしみじみしました。ジュリエットにそぐわないような大人び方ではなくて、ジュリエットとしての成長というか。もちろん前回の彼女もそのままでとてもすてきなジュリエットで、大好きだったことに変わりはないです。
前回夢見る夢子ちゃんなほんわか響きだった、わたしまだ恋をしたことがないの!(だから憧れてるの!してみたいの!)が、わたしまだ恋をしたことがないの!(それなのにパリス伯爵と結婚できません!)というような強い響きに変わっていたなと7日感じたのですが、21日はまた違った「でも私まだ恋をしたことがないのっ!」と語尾に小さな「っ」が入るような、すねたおきゃんな感じになっていて、後者がよりかわいくて、ひそかにもだもだしていました。ロミオにバルコニーで求愛されて「けっこん!?」とわたわたしている姿や、去り際の「千回愛してると言っても足りないくらいよ!」以上に「おやすみ」のちょっと照れくさそうに振り返ってから、ぱたぱたと駆けていく姿がほんとうにういういしく、座ったまま仰け反りたくなるほどかわいかったです。バルコニーから降りて、手渡された薔薇の花をジュリエットに捧げるように掲げるロミオも、彼がいなくなってから顔を掌で覆う姿も。
7日は、結婚式前の「だって、今まで育ててくれた」もですが、ばあやがつくってくれたウェディングドレスを着れなくなったことへの「ごめんなさい」が初演で観た以上に深く響いた気がしました。両方とも、自分がここまで育つためにどれだけばあやのお世話になったのかをちゃんと振り返ってるこの言葉で、それは前回も感じたことではあるのですが。
また、21日、霊廟で目覚めたあとのりなジュリエットの、それまでロミオの鼓動が聞こえないことに激しく動揺していた様子だったのに、唇に毒が!のあとの「…残っていないわ」がとても静かで深く、彼を喪った事実が彼女にのしかかってきたことがぐぐっと迫ってくるようで、いつも以上に心を揺すぶられました。そのあとのロミオ、ロミオ、あなたの唇、が恐ろしく淡々としていたのに「まだ、あたたかい…」で堪えていた感情がこぼれ落ちてしまったように、顔をぐしゃっと歪めてしまうところも。りなちゃんはジュリエットだ、彼女はここでジュリエットとして生きている、という当たり前のことを思い知らされたきもちです。
霊廟で並んで眠るように死んでいたふたりが、最後の最後に両側からそれぞれの家の人間に引っ張られたとき、彼女らの手がほどけない理由。死ぬ直前に、ロミオの手をかたく握ったのは、他ならぬジュリエットの意志なのだという事実。

ひばりの朝でキスしたあとのベッドから降りるゆうたくんのロミオが、最後までりなジュリとくっつけている箇所がおでこなのが、せつなくもかわゆかったことを思い出して。



ロミオとジュリエットまで!