TROIS

観劇後に気合があったときだけ書きます

ロミオとマーキューシオ


ロミオとマーキューシオの組み合わせを8日の城田&良知でコンプリートしまして、やはりベストな組分けは山崎&石井、城田&良知なのかなと思いました。
以下、Wロミオについてそれぞれ触れつつ、個々の組み合わせの印象を。

【山崎ロミオ&石井マキュ】
結局個別の役柄観も書かぬままだったのですが、ここでちらりと触れると、Wロミオは外見とは反比例して、いくさぶろうのほうがより大人っぽいロミオ像だなと思っています。
「まだ見ぬ恋人なんだ」の言い方ひとつとっても違いますし「facebookに募集中とでも書いておけよ(恋人募集中と)」と浦井ベンに言われた時の切り返しの「そっか」も山崎ロミオだといつもの軽口の叩き合いとしてさらりと受け流しているように聴こえます。モンタギューの直系であり、いずれは一族の長となる家のの一人息子としてのお育ちの良さと分別をわきまえつつ、今まで付き合ってきた女の子たちの中にすごくピンとくる子はいなかったから、いつかまだ見ぬ恋人とも出会えたらいいな、まあ出会えなかったら出会えなかったで親の言う人とお見合いしてもいいけれど(結婚しても遊びはできるし)、みたいなドライさを兼ね備えているのかなと。……育ロミオが誠実でないと思っているわけではないのですが、二股をすることはなくその時その時でひとりのひとときっちり付き合うけど、スパンが意外と短い、というようなイメージを受けてしまうのは私だけでしょうか……
どんなに前後の演技で感情を露わにしていても、その感情の揺れがイコール歌声のぶれに繋がることは絶対にない、彼の頭の中には楽譜がそのまま入っているのだろうか、というような素晴らしい歌声は、彼の武器でもあり、またそれゆえに受け取り手にとっては感情表現にとぼしいと捉えられてしまうこともあるのかな、と思ったのですが「僕は怖い」や「憎しみ〜リプライズ〜」を聴いて、彼の歌声においての悲しみや憎しみの表現は爆発的ではなく、どちらかというと籠りがちな、内にぐっと沈んでゆくものなのかなと感じました。
そんな物事の分別がついている育ロミオと石井マキュという組み合わせではどうなるか。知らぬは「恋の火遊びをそろそろ覚えろよ」と仮面舞踏会へとロミオを誘う石井マキュばかり、であったのなら切ない。実際に女性関係がそこそこあるロミオかそうでないかはさておき、このロミオ、恋をしたら友情と恋愛は別、どちらかといったら後者に燃えている時は後者を優先、ときっぱり線引きができるロミオだと思うので、だからこその「街に噂が」のマーキューシオ(とベンヴォーリオ)を説得する際のドライさ加減が際立つと申しますか「まだまだ君たちを愛しているんだ だが彼女への愛はもっと深い」説得の口調も真剣ではあるけれど、そこのところ男同士ならわかってくれるだろ? というような、そういう意味での甘さを感じてしまう。石井マーキューシオが「もう終わりだ」と呟いて立ち去ってしまうほどの執着心を自分に持っているという事実に彼は気づいていないのだと思います。城田ロミオも別にそこには気づいていないのですが、育ロミオだとその残酷性がより際立つ気がするので、石井マキュの満たされてない感が、欠落した部分が空いたまま最期を迎えてしまう、なんとなくすれ違いを感じる組み合わせだなと。でもマーキューシオにとっては大好きなロミオとベンヴォーリオに看取られることができたことに変わりはないから、結果として幸せな最期だったのか。


【城田ロミオ&良知マキュ】
城田ロミオの「もう僕はジュリエットなしでは生きてはいけない」の真に迫り様ったらない。確かにきみはジュリエットちゃんがいなければもうだめだね、というぐずぐず具合。乳母とロレンス神父の間に挟まれ両脇から励まされながらも、あの大きな身体を背を丸めるようにして、椅子に縮こまって座っている姿がもうなんとも情けなくもかわいらしい。城田ロミオにまだ恋愛は早かったのでは、と思わせるほどのモンタギューの仲間とじゃれあっているのが一番似合う様な子どもっぽさ。好みとしてどちらかときかれたら育ロミオを迷うことなく選んでしまうけれど、母性本能をくすぐられるのは恐らく彼の方。
舎弟と兄貴、と言い切ってしまうのはいささか乱暴にすぎるかもしれませんが、城田ロミオがクールな外見に反して世間知らずの甘ったれいいとこのぼっちゃん感がだだもれなので、それゆえにらちマキュの兄貴っぽい面倒見の良さ、甲斐性ありげなところがロミオの面倒を幼馴染としてみてやっているのかな、という風に思えるわけで。この二人だと仮面舞踏会に誘うマブの女王も、門限があるから夜遅くまで出歩いちゃいけないってママが、と渋るロミオを無理やり肝試しに誘うぐらいのイメージ。城田&浦井&良知トリオの幼馴染だと、ちびっこの頃は三人どんぐりの背比べな身長でいぬっころみたいにもつれ合い転げて遊んでたのにいつのまにかロミオばっかりでかくなりやがって、ってマーキューシオが思っていそうでかわいいです。世界の王の身長のでこぼこ具合よ。
マーキューシオの死の場面も、この甘ったれロミオを残して先に死ぬのはらちマキュも心配でたまらないだろう、だからこんなに「謝るのはガキだけだぜ、おい」とロミオを心配させぬように頬を歪めてでも笑顔をつくろうとして、胸だか首筋だかを元気づけるように叩く様子もすとんと腑に落ちて、彼の死がぐっと胸に迫ります。僕が一番頼みにしていたマーキューシオが!(私が一番頼みにしていた甥のティボルトが!)ではないですけれど、あんな存在の親友が目の前で死んでしまったら城田ロミオが激情に駆られてしまっても仕方ないだろうなと思いました。




ベストたる必然性が伝わるような書き方ができている自信がありません。精進したいです。