TROIS

観劇後に気合があったときだけ書きます

クリエ・ミュージカル・コレクション 1/6ソワレ、11ソワレ


「卑しく恥ずべき欲望こそが我らの最後の支配者」
「愛し始めたの人生を」


今年の初観劇(?)演目。
各々方の一曲一曲が鉛の弾のようにずしんと重くて、お願いだから一曲ごとに5分、いやせめて3分休憩挟んでほしいと本気で願いながらの濃厚な2時間半。本来なら前後のお芝居あってこその、全編通しで行われるはずのミュージカル楽曲を一曲だけ切り取って見せることのむつかしさについてよくよく考えることが多いこの頃だったのですが、このコンサートでは一曲の中に物語を編み込む力の凄さや、切り取ってもただわくわくするショーアップされたナンバーの楽しさをひたすら噛みしめていました。

以下、特にずしんときた楽曲を中心に、役者さんごとにだったり。

○あっきーのまるちり〜握った拳に神は宿る、僕こそ音楽
まるちり〜握った拳に神は宿る。初見、イントロの最初の方では何の曲だか気付かず、アンサンブルさんが歌い出した瞬間に息をのんで、舞台奥のぱかっと開いた空間からまっしろな衣装であっきーが出てくるだけで、背筋を駆け上がるものをおさえきれなくなった。二回目でもほぼ同じような感覚。雷のような歌をうたうひと。あの声で、拳をふりあげろ、と歌われたら平伏して従うしか道はない。一音、一語に溢れんばかりの音楽が、好き!って気持ちが詰まった爆弾のようで、ライトをしぼられる最後の笑顔まで息を詰めて見ていた僕こそ音楽も。それぞれシローでしか、ヴォルフガンクでしかないひと。何度思い返しても、訴えかけてくる声の力が、質量があるのではなかろうかと思うくらいずしんと重たかったです。日々生きることが長距離走なら、ずっと走りつづけられるように、みんな少しずつ調整して一瞬で100%は出さないし、出せないと思うのだけれど、このひとは、緩急をつけたりすることがあるんだろうか、とあの2曲を聴いてる時思えて、ひたすら恐ろしかった。役柄が役柄で、曲が曲だったからというのもあると思うのだけれど、この一点の爆発に命をかけてるひとのような。神の寵児のような役が似合うひと。もはや役なのかご本人についてなのか感想がよくわからなくなるほど、混じり合ってしまっている。

○あさこさんとりおくん、まりおくんのユーアーザトップ
まりおくんの曲をまさかそのままりおくんがスライドして歌うとは思わず、びっくり。まりおくんはともかく、あさこさんと目配せし合って、コミカルに表情豊かに歌ってちょっと踊ってステップ踏んで、と楽しげなりおくんが観られるだなんて!ゆれるオーロラとあさこさんがいえば、りおくんはモナリザの微笑みと返すし、ミッキーマウス、であさこさんが両手を頭に当てて耳にしてミッキーのまねするときに、その真似をりおくんが笑顔でしているところがもう。「雨上がりの」とりおくんがいえば「虹!」とあさこさんがなぞかけの答えみたいに返すのも。永遠のロマンス、あんたは奇跡、のフレーズの時のあさこさんの笑みがぷりっ、にかっ、と効果音をつけたくなるようでかわいくて、最後もりおくんの手を取ってエスコートしてもらうのではなく、自分からぐいぐい引っ張ってはけてゆくお姿が、ほんと、らしい!の一言で、かわいくてにこにこしながら見ていました。エニシングゴーズ(表題曲)もアンサンブルさんを引き連れて踊るお姿がかわいくて、上演時に見逃した後悔を募らせてしまった。

○山口さんの、抑えがたい欲望
「きらめく空を見ていた 遠い夏 あれは確か 1617年 ひとりの娘を愛した」題名の意味を改めて噛みしめる。2011上演時はそこまで思いを馳せていなかったことにまで。彼、伯爵はじぶんのしでかしたことをかなしんでいるけど、それはもう人間が理解できる階層のものではないのではないだろうか、と「白い肌に詩を書いた その赤い血で」とほほえみながら歌うお姿を目にしながら、すうっと血の気がひくような気持ちになりました。それでもちっぽけな生き物としてでしかないものの嘆きなのだろうか。劇中仕様の舞台衣装ではないぶんなのか、一曲だけ抜き出されていたからか、そぎ落とされて、意図がダイレクトに伝わってくるようで、静かに静かに圧倒されていました。ほんとうに永遠とも思える時を生きていたように感じさせる、山口さんのクロロックだからこそ、なのだと思う。こういう"あわい"にある役やそういうひとの感情を吐露する曲がやっぱりとても好きです。

○涼風さんの42nd streetとあさこさんのキッチュ
冒頭でラグジュアリーなお衣装にウェービーロングヘアで魅了する涼風さんの、42nd streetでのパンツ姿に潔いショートカットソフト帽斜め被りで、帽子から覗く下半分のお顔でニヤッて笑うお姿の超絶格好良くてしびれることしびれること!あさこさんのキッチュの格好良さもまた別格で、以前は宝塚の人のコーナーなのね、とだけ思っていた箇所に気持ちが高揚するようになっている変化。セクシーさもキュートさも両方詰め込まれたフルコース。

○りおくん
コンサート系は2011の1010以来。明日への道とI'll Cover You以外はまりおくんの曲をそのままスライドして歌ってたのにびっくりして、でもだからこそ普段じゃ絶対聞けない愉快な曲を歌ったり、え、この方と?!ってお相手とデュエットするりおくんが見られて楽しかったです。明日への道とひとりはみんなのためにが、右足踏みならしてラストで拳突き上げ!なのにロック・・・!と驚きつつ、力強く気持ちが高揚する曲ももちろん、個人的にI'll Cover Youりおくんコリンズが、楽曲が楽曲なのもあるけどいつも以上にソウルフルで、SoLのソロのところもすごくすてきだったので、りおくんのRENTを少し夢みました。ご本人もお好きそうなイメージが勝手にある。演目を拝見してないのでシチュエーションをきちんと把握していないのですが、Look What We Madeのかずさんとのデュエットもあたたかみ、包容力がにじみ出ている感じがとても好きです。鮮烈な光or黒々とした闇ではないりおくんを初めて見た思い。
タンクトップ&ジーパン&山口さんとお揃いのこうもりカチューシャであっきーアルフにしつこく迫ってはかずさん教授に押し返されてたまさかのりおヘルちゃんは、確実に夢に出る。

○知念さんのその目に、二人を信じて
まなかいにかなしみや憂いが漂っているような放っておけない雰囲気のある方なので、生で観たことがあるエマのれなさん、マリーの和音さんとは全く異なる役のイメージ、違う作品世界が展開されそうな歌い方をなされる方だなあと。でもぎゅっ、と見ているこちらが息が詰まりそうになる表情をなさるので、目が離せなくなる。セクシーなCinema Italianoも好きです。

○岡田さん
あの夏はどこに@三銃士→カフェソング→言わない気持ち@ブラッドブラザーズ→夜のボートの4連発でひたひたのかなしみに浸けられる岡田さんをこれでもかと投げつけられ、この方は握り返されなかった、背に回せなかったその手を早く誰か握ってあげて、いますぐ、ってぐ、と眉根を寄せながら見てしまう役が本当に似合うひとだなと胸が詰まりました。夭折する側ではなく、はかなくなった誰かを思いながらいつまでもひとりで生きている、慈愛に満ちた目の奥の悲しみが見える、みたいな役どころが恐ろしく似合いそうな方。きっと演出家さんとしても歌わせたくなるのだろうし、こちら側も聴きたいし、なのですが、ひたすら切なくなることこの上ない。
アトスで出てこられたときはへ!?と予想外さにびっくりしたのですが、あさこさんのミレディとの「あの夏はどこに」の前振りキャスティングだったのだと思えば納得。応えてくれない相手に想いを寄せる役を観ることが多かったので、そういう意味では新鮮でありつつも、もう通わない気持ちを噛みしめる人であることに変わりはなく。
カフェソングは下手から登場される時点でのただマリウスでしかありえない表情と「その日は」と「こない」の間のためにためた表情がもんのすごくて胸を鷲掴みにされました。これからのコゼットとの暮らしはあの瞬間はいっさい頭になさそうな、ただ大切な人たちを喪ってしまったことに対する慟哭。昨年からご出演されるコンサートで歌うお姿を拝見する機会が幾度かあり、曲目リストを見たときは別の曲も拝見してみたいななどと贅沢なことを考えていたのですが、そのときのじぶんに張り手を食らわせたいです。岡田さんの、マリウスがレミで観たい、と改めてしみいるように思いました。
言わない気持ちでは、歌い出しで、ハハッ、と自重するように笑う声が聞こえて、その時点で胸がつぶれかける有様。相手のいないダンスを見えない誰かをいとおしむように空に腕をまわしながら踊って、そのあと自分の腕をぎゅっ、と抱いたときのかなしげな、何かを諦めている人の顔。
夜のボートは、いままでにきいた中ではちょっと若めのお声な気がしました。涼風さんシシィとすれ違う時に差し出した右手が、彼女に受け入れられるのを諦めきれないように、腕は下ろされながらも、ひとの手がそえられるかたちに指がやわく折り曲げられていたのが忘れられない。
という4連発を経ての、Season of Loveは「In daylights – in sunsets〜」パートがまるまる振られていたことの、歌詞とご本人のマッチングへの感謝と、最後のシャウトのところで目ぎゅってつむって口ぱかってあけて白い歯見せる顔が楽しげでかわいくてもうもう、ここでカタルシスを得られてよかったと心底思いました。という感想は適切なものなのか。



何か舞台を見に行くとお目当て以外の人も気になってしまって、見る演目が雪だるま式に増える無間地獄に生きている・・・・・・