TROIS

観劇後に気合があったときだけ書きます

レヴュー・スペクタキュラー『SUPER VOYAGER! -希望の海へ-』おかわり

宝塚はまりたての友人の感想を読んで、恐らくわたしにとってのMr.Swing!のらんじゅさんくらい、SuperVoyagerの望海さんが盤石な存在に見えているという事実に、時の流れを感じずにはいられないこの頃です。前回の感想でとばしていた場面をいくつか記録、と思っていたらだいたいほとんど網羅していた。抜けてる場面はこちらに。
socotsu.hatenablog.com/entry/2018/01/05/222740
楽しかったことを記録しておくと、未来の自分の貯金になる。

▼それぞれの銀橋渡り箇条書き
この場面に詩情はそんなに求めてない、インパクト勝負のアトラクションを体験するような気持ちなので、とんでもなく歯が浮きそう(しかし甘い一辺倒とも違う)な歌詞をキザりながら歌いきる人たちをおもしろく楽しく見つめている。

・銀橋のあーさを見るか、舞台上の叶ゆうりくんのイルカエスコートぶりを見るか。あーさの「オレが目覚めさせてやる」のがなりと、客席に身を乗り出し気味に手招き(指招き)する強引アピールがキャラに合っていてよい。「大好きだよ泣き虫プリンセス」での口と眼二本立てのウインクが凄まじい。タカニュには残っていたけどBSでもBDでもきれいに抜いてはくれなかったみたいなので、1年後の楽映像放送に期待する。叶ゆうりくんはイルカをなんだと思っているのか(讃えている)。マウストゥマウス!!!
人工呼吸なの?といっているひとがいてはっとしたけど、目が覚めてあの顔が至近距離にあったら既に天国かと勘違いしてしまいそう、というおきまりの思考の流れにいたった。

・あーさパートの歌詞インパクト直後でふつうの人に見え(聞こえ)がちだけど、なぎしょパートも結構すごい。腰ぐいぐい。でも舞台上が娘役さんたちなので若干緩和されている感はある(?)。やはりまだ「マイマミーからもらった悪い血が騒ぐ」byミキティ・ファンシーガイ(好きです)がなぎしょの歌った歌詞インパクト大賞として揺るぎない。どっちも過剰に変わりはなくて、乙女ゲーも少しかじったおたくとしては野口先生の歌詞の世界のほうが馴染みはある。(しかしどちらかというとミキティのほうが好きなのは、訳者がふるい海外翻訳文学の融通のきかなさ、みたいなところがあるからかも)脱線。
姿が視界に入るまえに聴覚から攻めてくるなぎしょのアピールの過剰さが好きなのは、望海さんもそういう男役だからというのも大きい。おもしろさ一歩手前くらい威勢が良い男役が好き!日常生活で仲良くしたいタイプと真逆。

・とんでもないことに変わりはないけど、咲ちゃんパートの壁ドンドンドン(叩く)距離ドンドンドン(接近)みたいな語呂合わせは結構好きだった。壁に追い詰めるドンっていうより相手の心の鍵を叩いて壊している!?(ドンドンドン)みたいにも思えてきて、単純なようでかけ言葉になっているという点に滋味深さもあるかもしれない(ない?)。舞台上のおーじくんをよく見ていた場面。

・コマちゃんのこっちにおいで〜みたいなゆるやかな両手の動かし方(振り付け)がくせになる。はけ際のウインク、目のつむり方はソフトなのにつむる直前「ロックオン!」みたいにカッと開くところをみると逃れられない気持ち。あの薄そうなまぶたに挟み込まれる。

・ポンポンを持った望海さんのほとばしる気合いを感じる「行くぞーーー!」いつものことだけど腹から声が出ているし魂燃やしてる。オールラウンダーなのに限りなくアグレッシブベースライナー寄り。きほちゃんにも言えることだけど、後ろで応援するパートのはずなのに気がつくと気持ちが声にのって前線にはみ出している。パレードラストの「レッツゴーーー!」のあと、幕が降りる最後のひと踊りだ!とばかりに右に左に身体をぶんぶん揺らす一番大きい羽を背負ったひとと同じひとだな、ぶれないな、とにこにこ見てしまう。2階席にきたロケットの下級生の子たちのかわいさがすごい。

▼希望の歌
ネズミーランドの一対の着ぐるみみたいな衣装を着たふたりの見た目と動きのかわいさ、しみいるハーモニーに心を洗われる。望海さん主旋律パートで胸に手を当てて左右に揺れながら眼を閉じて歌うきほちゃんの声ののびやかさ(アーアアアー♪)とかわいさにいつもやられている。このふたりだとどちらがコーラスでも聞いていてとても心地よい、うれしい楽しい大好き!と叫びたくなる。あなたが笑顔で〜のところで両人差し指で両頬をそれぞれさしてにっこりするきほちゃんの歌のおねえさんみがあるポーズから目が離せなくて、トップ男役ファンはこうやって相手の娘役さんのほうにも心が揺れてオペラグラスを持つ手が乱れるのだと身をもって知った。さまよえる目線。お芝居の「焦燥と葛藤」でも本当に困ったけれど、望海さんが出ている場面でどこをみるか迷うだなんて、わたしのなかではかなり画期的な出来事だった。下手端から上手へ移動するときの一緒に脚を上げる振りも、転調するときのメロディもとても好き。夢眩のらんらんの「限りない愛を君に」をふたりで歌うところもとても好きだったことをしみじみ思い出す。
野口先生のやりたいことが多すぎて、尺が足りなかったのだろうなと想像できるけど、舞台上のロケットもロケットとしてちゃんと見たいので、ロケットとふたりの歌を被らせているのがとてつもなく贅沢でもったいない構成だと思った。ロケットボーイ(ガール?)のあやなちゃんがすらりとうつくしい女装姿のままバチバチウインクをキメまくるところが、さすが元星男の勢い!と思う。好きです。下手から4番目のはおりんをよく見ていた。

▼水に浮かぶ月
ララランドin雪組との噂の場面。DramaticS!のSong&Danceに続き、大勢でがんがん踊るところを見るのって楽しいんだ!ということに気づく。どう考えても目が足りない!! 娘役さんのカラードレスの配色の豊かさはもちろん、ショーに多用されるイメージの原色だけじゃなくくすんでるニュアンスカラーのドレスのこもいるのがおしゃれ。ドレスの形も袖と裾の長さにバリエーションがあって、特にひまりちゃんのフレンチスリーブと膝上丈のスカートのちりちりっとした裾、あんこちゃんのドレスの色とホルターネックがタイプだった。あんこちゃんは衣装をおしゃれに着こなすよね、という話を友だちとよくしていた。スカート丈、裾のカッティングによって、娘役さんたちが並んでスカートをふりふりしながら歩み出てくる振りでの裾の斜り方がそれぞれ違って目に楽しいんです。気がつくと娘役同士で投げキスしてるみちるちゃんのねえさん!と呼びたくなるこなれた格好良さ。グランフェッテはしょーのちゃんの回転のキレがひとり段違いなのに釘付けになってしまう。ピンクのベーシックな形のドレスにポニーテールが似合う。あゆみさんのばりばりのダンサーテクに裏打ちされた自信に満ちあふれた表情がたまらない。まちくんの前髪をなでつけない無造作ヘアーが彼のわんこっぽさに合っていて、リアル男子みが増している。ひとこちゃんとあがたくんが顔を見合わせながら指を鳴らすようにして前方に走り出てくる場面のやんちゃさがかわいい。全員出ている場面はそのときどきでマイブームの子を見ていた。そして全身を余さず使って手脚の長さを見せつける咲ちゃんのダンスのおしゃれさ、ソロ冒頭の跳躍の軽やかさ、なんてことないように脚を振り上げる姿は見ていて毎回胸がすくポイント! あんまりさらりとこなしているように見えるから私にも踊れるのでは!?というとんでもない勘違いが一瞬浮かぶけど、どう考えても全身複雑骨折必至です。

▼日記
ショー幕開きのあの船長さんスタイルなので、歌い上げる歌詞とポーズのゆめゆめしさとどっしりした衣装のミスマッチに何とも言えずにむずむずしていました。背景の映像、私はオペラグラスの視界の狭さによりあまり気になっていなかったけど、過剰では?とか既にサヨナラ!?とか言われるのはわからなくはない。ちぎちゃんのお披露目公演のショー、ファンシーガイ冒頭でこれまでの役の写真が幕に貼られていたのを観て、これずっと応援してきたファンならきっと嬉しいよねえ、と友人と話し合っていたのを思い出しつつ、あれよりも枚数多いし動いてるし怒濤だし。動画サイトに勝手にアップされた音源と一緒に流される雑ファンアートコラみもある。なので望海さんのファン以外の方がどう思っているかはわからないんですが、オーシャンズ11花組時代からのファンとして(ヅカオタとしてはほどほど、この密度で生身の人間を追いかけた自分のおたく歴のなかでは長いという体感)、そんなことある?のあの番組の放送を友人と突きあいながらリアルタイムで追いかけていた身としては、あのエピソードが大劇場の真ん中で一場面を使って歌われる歌詞になって、そのことに望海さんがたいそう感慨深そう(各種メディアインタビューより)というだけで観ているうちにぐっときてしまう、何かが芽生える場面です。せりの下で日記とたわむれる、船長さんの少年時代の彩海くんすごくかわいいけど全然望海さんの面影がない!(輪郭)似てない!でもとてもかわいい!歌詞の最後にいきなり出てくる「愛おしいあなた」って誰だ、と思いながら、こういう場面で愛を注ぐ対象を唐突に登場させる野口先生、というより宝塚のシステムのことはいやじゃない。望海さんがひとりで歌っているのと歌詞の比喩表現が大活躍して対象が漠然としていることもあるし、作家先生のお披露目公演へのはりきりも、この場面を大事に思う望海さんの気持ちも、全部が渾然一体となって劇場全体を包み込む「愛」のようなものを感じる。これ以上まっすぐすぎると心をやられて日常に帰ることができなくなるので、まったく計算されていないであろうほとばしる愛ゆえの過剰さは、抜け要素として勝手に捉えている。
しかし結局、この後のまっすぐすぎる「宝塚と、その舞台で演じる私たちタカラジェンヌと、観客」の間に存在する愛にあふれた歌詞と場面のまばゆさに、張っていた気は即ぐでーんとして使い物にならなくなるわけですが。

▼ダイヤモンドショータイム!
まばゆいばかりの真っ白な燕尾、シルクハットにケーンを携えてのマスゲーム。雪を割り花開いた望海さんときほちゃん雪組のみなさん最高です場面。稽古場での練習期間も、これだけにかかりっきりにできないことを思えばとんでもなく短いし、舞台上で大階段を出してあのフォーメーションを練習できる期間ってほんの数日ですよね?なにがどうしてあんなに揃えられるのかすごすぎる.........!
船長さんから着替えて(暗闇の中での早着替え、帽子を取ったあと髪をなでつける仕草が好きだ)舞台前方に歩み出る望海さんの生まれたてみたいなまっさらな表情、みとさんにわにわさんから受け取ったケーンの使い方を一通り試す〜ハットのつばに手を添える、の流れが「テニスって、楽しいじゃん!」のリョーマくんみたいな、天衣無縫の極みを会得したひとの輝きだった。BS映像での抜き方、ハットのつばをくっと下げると同時にくっと弧を描く唇の、基本のきのような、不敵な笑みがそう思わせたんだと思います。真ん中の人におなりになったのだ......という感慨。スパンコールと照明の威力だけじゃない。私の視界の中心はこれからもこれまでも変わらないけど、オペラグラスを外しても、舞台のど真ん中に好きな役者がいる、というのはすごいことだ。夢眩のフィナーレを思い出すこの衣装は、たぶん望海さんの身長的に男役としての体型を引き立たせるものではないのだけど、THE正装な燕尾、まばゆい白の佇まいにぐっと捕まれてしまって、少しのハンデをときめきが軽々上回った。トップスタァ1年生ぼさのかわいさと、朗々たる歌声と所作の堂々たるかっこよさ。銀橋に出る直前の下手花道での「幸せ送ろう」の「しあわせ」がぎゅっと幸せそのものを抱きしめているようなしみしみの声の日には、それを「送」られてしまう客席、その劇場空間にいる幸せをかみしめた。「この瞬間のために私たちは生きている」と望海さんがタカラジェンヌとして歌うのを聞く観客は、役者と自分たちが両思いであるという夢をみることができる。私もこの席に座って、この瞬間舞台上で輝く人たちを観るために生きてきたのかもしれない、とうっかり思い詰めてしまう。双方から溢れた気持ちが結ばれる瞬間の連続で、宝塚はできているのかもしれないと思う。宝塚に限らず、いままで観てきたいろいろな舞台でそれに近い思いを抱いた瞬間はあったし、私が観たことのない、その場に足を運ばなければ体験できないエンタメで同じ気持ちになっているひとはきっと沢山いる。(キャラと役者のオーバーラップ、観客の気持ちの代弁、ダブルミーイングじゃすまないくらいの意味を盛り込んだ「テニスに捧げた青春」という歌詞を聞いていた頃を思い出しながら)「胸は高鳴り心は弾む」で斜めに移動しながら舞台奥に向かうきほちゃんのティンクの羽が見えそうな後ろ姿が好きだ!全体的にオペラグラスを構えず引きで観たい場面だけど、舞台前方、上手から下手の花道までずらりと並んだ雪組子がかわりがわりのおじぎでウェーブを生むところは特に全体を余さずとらえたいし、できれば1階センターブロックから観たい光景。前方であの拠のなかにすっぽりおさまるのも、最後方から見渡すのも。

▼暴風雪
確かにコマちゃんの場面のしっとり感からのつなぎはなめらかではないし、せめてあと数秒、完全にはけてからこの場面に移行すれば!?と思わなくはない。間にロケットを挟めばよかったのでは!?などと勝手に考えつつ、生の舞台を見に来ている身としては口パク録音にも考え込み、それでも若手男性アイドルライブを模した場面という設定は好みだった。オラオラしてる男役はもとから好きだし、「青春してる俺たち」みたいな集団のダンス場面にはテニミュ育ちゆえに弱みを握られている。センターを埋めるあーさのこなれたあおり×なぎしょの加減を知らないらふっと笑ってしまうのとかっこいいのラインギリギリな押し出しの熱さが良いバランス。東京後半のさらなる盛り上がりぶりを体感しながら、拍手しかできないのがもどかしかった。

▼情熱の一夜
ここの咲ちゃんのぼわっと霞がかった歌声は、なんともいえない色気があるといつも思う。曲調なのか振付(腰位置が高いひとのけだるげなうごめき)なのか、冒頭の銀橋渡りの歌詞とご本人の男役としてのニンは真逆だよな、そうそうこっちと思わせる、自分からガツガツじゃなく誘い込ませる系のにおいを発してる。とりまく娘役さんたちの力強さも相まって、これから生け贄になって食らわれるひとの踊りみたいな(ほめてる)。誤解を恐れずいうと『西洋骨董洋菓子店』の小野タイプ。ここのあゆみさんの、肩甲骨はこれくらい浮き立たせてこそゴージャスよ!みたいな背中がたまらなくて毎回凝視している。咲ちゃんに背中から寄り添うひまりちゃんの、悪魔のしっぽが生えてそうなキュートだけど邪悪さが少し漏れてる笑みも好きです。

▼デュエットダンス
ほとんど踊ってなかったのいわれるまで全然気づいてなかった!!(節穴)いままで書いてきた内容全てに疑いがもたれるような感想だけど、だって望海さん直前までアンダルシアしてる(動詞)し運動量として許してほしい、と思ってしまう。ゼンツのリフト初見は幻を見てるのかと思ったくらい、たぶん乗るきほちゃんのタイミングも良いのだろうけど、望海さんあんなに細いのにくるくるまわすのもまったく違和感なくて目が飛び出たので、ご覧になりたい方はねこ(次回大劇場ショーのかってな呼び方)に期待してください……立ち位置がよくわからなくなってしまったけど、この短いデュエダンのなかでのふたりの気持ちのやりとりみたいなものをかってに感じとって幸せになっているちょろいファンです。
きほちゃんと並んで肩を寄せたまま、望海さんが宙に流した手の、指先をふたりで見つめながら視線をすべらせるところがとても好き。銀橋ラストの決めポーズ前に、きほちゃんの肩に顔を寄せる望海さんの伏せた眼の、表情のやさしさが好き。

▼フィナーレ
アイラビューーー!のかわいさに尽きる。多幸感で息がつまる。きほちゃんのひたい飾りの似合いっぷり、かわいさよ。