TROIS

観劇後に気合があったときだけ書きます

宝塚短歌まとめ

幕末太陽傳のころに詠んだもの

 

 

世の中の類いまれなるたっとさを結ぶ手だてのデュエットダンス
ロマンチック・ラブ物語る世界なら君のものにはならないだろう

 

完ぺきに男の気持ちがわからないあの子の父性はカフスで留める
物語すぎないでいたいくらかは緑袴にしまっておいた
お砂糖とそれからシナモントーストとルマンでできてる人生(理想)
"ぼく"として生まれた男と対話するはるかな性の乗り物を引く

 

美しいもののありかを知らされる美しさから遠ざけられて
いつかの日きみはわたしに育まれきみを透かした少年の日よ
あなたから透きとおったら手をつなぐ見えないものは見なくていいの
木漏れ日の中で目覚めてふたりきり5月の魔物は少女のかたち

封筒は透明無色「娘役性の違いで解散します」
まなざしが結ぼれるたびあわよくば生まれ直せる類いの孔雀
存在の不在を支える赤い椅子燃やされるから再々々演

 

感情がやりくりできない立っている立っているしゃがんでいる 立ちます
黙ったら出てくるごはんになっていた栄町には住まない人生
縁あって共鳴角度をすべりおり星をどかどか降らせる声よ
美しさという国境を蹴り飛ばす 後でばらして鉛筆にする

 

どこにでもいける気がする金曜日たぶんあなたのチケットはない
もう来ませんなんてことありません二兎を追いかけ生きのびてやる
じゃあそこに足かけてみてあっち見てスターブーツのかかとで踏んで

 

そのムラは焼いたらだめだ声合わせお餅をつくならふたりがいいよ
こんなにも知り尽くしたら好きじゃなくなっちゃうかもって めぐりあう盆
誰からも隠されているひと巻きのタイにおさめたすき透るのど

 

万雷の拍手の中でめぐりゆく季節は想いを追い立てまくる
せり上がるあなたに瞳を凝らすとき忘れさられる奈落の深さ
閉幕を告げる鐘さえ盗めればこのパーティに終わりはこない
君にしか関心ないんだあとちょっとカーテンコールが続く限りは

 

息をするように「わたしの少年性」与え続ける純正少女
少年が息するときに少女なるもののえくぼは深く清らに
ときめきを食いものにしてぼくたちの少年少女は光をまとう
まろやかな歴史を削いでりんりんと満ちるあなたの幾年を知る
客席と舞台ほどには境なく銀橋かからぬ近距離戦線

 

触れ合わぬ唇だからおのおのに赤いルージュで濃く鮮やかに
暗転の間際手をとり笑い合い上手にはけたふたりのその後
最前列下手端から上手袖見つめるような愛だったのか